2回目って今さっ!

 そういえばGWのエラッタ関係の話をしようと思っていてすっかり忘れていました。もう今更な感じはしますが、ちょうどいいから今続きをば。


 このたびのGWのエラッタ、ルール変更の中で、「シャア専用デッキ」にまつわる事は以前に書いたので、今度は「Oガンダム」に関して。
 「Oガンダム」は今年の上半期の間に行われたチャンピオンシップ大会関連のイベントにおいて、来場者に1枚ずつ配られたプロモーションカードだが、そのテキストの強力さから、テキスト部分が改変されるというエラッタが行われたが、その変更前のテキストは以下の通り。

GN-000 Oガンダム
UNIT
SP-63 紫 1-1-2-1
Oガンダム系 MS

プリベント(3)
(自動D):このカードの部隊が戦闘ダメージを与えた場合、敵軍本国の上のカード3枚までを見て、その中にある基本G以外のカード1枚を自軍ハンガーに移す事ができる。この効果は重複しない。

宇宙 地球 [3][1][3]


 色の異なる国力が2種類必要ではあるものの、合計国力2で3/1/3と通常のガンダム並の破格のスペックを持ち(参考までに、通常のガンダムは合計国力4でサイズが同じ)、さらに地球、宇宙のどちらにでも出撃する事ができるという時点ですでにだいぶ強いカードではあったのだが、そんなことより何よりとにかくこのテキストがまずかった。その効果を解説すると、つまり出撃するなどで戦闘ダメージを与えた場合、敵軍本国の上のカード3枚をOガンダムを使ったプレイヤーだけが見て、その中から基本G以外のカード1枚を自分のものにした後元に戻す、ということなのだが、このカード最大の罪がこの「敵軍本国を見て、奪ってからそのまま戻す」という点にある。
 なぜかというと、当たり前ながらすべてのGWプレイヤーは作成したデッキを「本国」としてゲームをし、そこからカードをドローするわけだが、つまりこのカードは効果が起動した場合、次に相手が引くカードは何であるか見ることができており、さらに相手にとって起死回生の一手や基点となるカードがあったなら奪う事ができる。このカードはドローというゲームの根本をある程度支配する事ができるのである。
 ……その要素をこのカードが持っていた時点で、このカードの持っている他のやけに優秀な機能がすべてのGWプレイヤーに牙をむいた。まず、廃棄ならともかくカードを奪うため、基本的にゲームから取り除かれる以外で一番回収の難しい敵軍ハンガーにあるカードは、まず奪還できないと考えてよく、しかも敵軍ハンガーと言う事は色があってしまうとそのまま使用されてしまう。そしてOガンダムを使っているという事はだいたい混色(2色以上)なので、その可能性は少なくない。カウンターカードや、ドローカードなど、汎用性の高いものを奪われた場合、切り札や起点を潰されると同時にダメ押しをされた形になり、もはややる気すら起こらないこと受けあい。そして、このカードは2国力で場に出せる上、プリベントまで持っているのでもみ消し※1すらきかず、さらにサイズが2国力にしては大きいため、1〜2国のカード1枚でこのカードをどうにかする事はまず不可能である。極めつけに、その起動条件が「ダメージを与えた場合」である。この対象は本国もユニットも関係無しなので、ブロックしようがスルーしようが本国から奪っていく。……一応重複はしないのだが、その程度を良心と呼ぶのはとてもではないができません。
 ここまで書いたように、このカードはとても優秀な点が多くあった。そして、そんなカードがこんな悪夢のようなテキストを持っていたのである。いくら対策しようが、最短2ターン目に出てきて3ターン目には殴ってくるこのかーどに1度カードを奪われれば、その対策カードすら引かせてもらえず、ドローがくすぶっているうちに2回、3回と殴られて終わっていく事も多い。そしてその対策もよっぽどメタを張ったカードでなければ、1枚でこのカードを打倒することなどできないだろう。ユニットとして優秀、混色ならデッキはなんでもOK、テキストは極悪、起動条件は簡単……正直、「完全に回ったOガンダム」に勝てる理由はなかった。
 そして、多くのGWプレイヤーがこのテキストと能力の危険性に気付き、使用した。相手が2ターン目に出したGが最初と別の色なら、それだけで怖がらなければならない時代の到来である。各地ではOガンダムがOガンダムと殴りあってお互いに本国を3枚差し出すという涙の出そうな作業が行われていた。内部調査※2がメインから入っている赤ならまだ何とかなる事もあったりしたが、それでもカウンターなどを奪われて使われたりすると絶対不利に変わりはなく、そのようなメインからの対抗手段がまずない他の色の多くがOガンダムにまさに食い荒らされた。しかし、それ以上の暴力であるシャア単がOガンダムを鼻で笑いながら※3Oガンダムを含むデッキを駆逐したせいか、結局目に見えてひどい有様だったのはシャア単だった印象が個人的にはあるが。……一応、3〜4国力あたりのカードならOガンダムをどうにかするのは結構簡単なので、相手の手札を読む能力がOガンダムプレイヤー側にも請求されたり、終盤に引いてしまうとロールインが痛すぎるあたり、弱点もない事はなかったのだが……それでも、やっぱり強力だった。ちゃんとしかるべきプレイングをすれば、「出るだけでゲームが終わるカード」がデッキの中に3枚も入っているのだから。
 また、その上に輪をかけて最悪だったのが、このカードがプロモーションカードであったこと。つまり、原則配布期間、イベントが終わってしまえば再版もしなければ再配布もされないカードであるということだ。前述したように、このカードは混色ならどのデッキだって入れる事ができる。……いや、それどころか、違う種類の国力が1発生していればいいと言う事は、ヴァリアブルでGにすることでその指定国力とは別の色を発生するコマンド※41枚と基本Gが1枚あれば、単色レベルの構築のデッキですら使用が可能だ。しかも低国力でサイズが破格で、その上テキストによって本国操作ができる。しかも1枚奪っていると言う事は、打点が1増えているという事なので、ウィニーデッキにすら投入は検討されていた。……そんなわけで、ほぼ半分以上のデッキにおいて、このカードを入れない理由はなく、入れなければ他のOガンダムに食い殺されるということになる。しかし、このカードはプロモ。一度配られたが最後、2度と手に入る事はない。となれば、この後になって確実に「持つ物。持たざる物」の壁ができてくることは誰の目にも明らかで、そして当然ながら誰も、そんなGWに未来など感じていなかった。……そもそも、プロモがなんか普通に強くなってきた辺りからおかしいと思う。
 そんなわけで、これまたシャア単と同じく、ちょっとGWを真面目にしている人なら誰もがこのカードにしかるべき裁定がくだらないかと期待していたが、基本的に新しいカードにはエラッタなどはかかりにくい上、Oガンダムは配布時期の関係で大きな大会では使われていなかったので、正直期待は薄い……と多くの人が思っていた。しかし結果として販売元はちゃんとその役目をはたしてくれた。すなわち、テキストへのエラッタである。これが販売元の危機察知能力によるものなのか、ようやくユーザーの声と向き合ってくれたからなのかは定かではないが、とにかくよかったという感じ。で、そのエラッタ後のテキストとは。

GN-000 Oガンダム

UNIT
SP-63 紫 1-1-2-1
Oガンダム系 MS

プリベント(3)
(自動D):このカードの部隊が戦闘ダメージを与えた場合、敵軍捨て山の上のカード3枚までを見て、その中にある基本G以外のカード1枚を自軍ハンガーに移す事ができる。この効果は重複しない。

宇宙 地球 [3][1][3]


 つまり、奪う場所が敵軍の捨て山に変更になっただけ。……しかし、これによって少なくとも本国操作は不可能になったし、打点+1という意味もない。単純に殴って奪うだけのカードになった。しかも、回復などで捨て山がゼロになっていたり、他に資源やダメージがない状況でブロックされたりすると効果は起動できなくなった。少しだけに見えるが、この変更はかなり大きく、少なくともこのカードを「どんなデッキでも入るぶっ壊れプロモカード」というGWに対しての恐怖の大王のような存在ではなくしてくれた。使いやすさや強さは変わっていないので、相手のデッキのカードを奪って使う事をコンセプトにするデッキならデッキの根幹といっていいほどの性能ではあるが、そのようなデッキは正直ネタの域を出ないし、逆にこうした特定の方向でのエースカードの存在は今後そういうデッキを組みたいという意欲の推進剤になってくれるだろう。
 こうして今期GW最大の悪夢であったシャア単とOガンダムはついえて、GW世界は一端のおさまりを見せた。今後メタゲームがどのように動いていくのか、楽しみである。


※1「もみ消し」……1国力でプレイできる赤のカウンターカード。2国力以下のカードのプレイを無効にして廃棄できるので、Oガンダムのような国力の低いカードには有効……のはずなのだが、何故かOガンダムがプリベント3など持ってしまっているため、まずカウンターは間に合わない。
※2「内部調査」……赤がらみのデッキならほぼ確実に入っているといえるほど使いやすい、1国ドロー操作オペ。ロールすることで自軍本国の上のカードを見て、上か下に送る事ができる。これによってOガンダムによる本国操作はある程度交わすことができるので、赤がらみのデッキなら何とかメインからかわせなく……もないこともあった。
※3「シャア単がOガンダムを〜〜」……シャアは回れば1ターンから8点をたたき出すデッキであり、Oガンダムはどんなに早くても始動は3ターン目。そしてさらに、シャアはその圧倒的な速度とパワーにより、後続をほとんど必要としないデッキなので、Oガンダムでいくら本国操作をしようが初手だけで全てを決めるシャアにはほぼ全くの無力。しかも、奪ったカードも国力が低くて大した効力はなく、そもそもシャア専用〜〜がらみの「シャアデッキでなければ使えないカード」が多い。さすがのOガンダムもこればっかりはどうしようもない。
※4「ヴァリアブルで〜〜」……現在では、茶と白を除く4色にはヴァリアブルの宣言によって、自軍Gが1枚でもある場合、Gとして場に出せるコマンドが収録されている。今のヴァリアブルはヴァリアブルとして使用できる代わりに発生する国力は別の色、というものが多く、これをデッキに投入しているならOガンダムのプレイくらいは十分に狙える。