先生!お願いします!

 ずいぶん遅れてしまったが、ガンダムウォーの現在最新弾、エクテンションブースター3で追加されたクロスボーン・ガンダムについての解説と考察をやってみたいと思う。

XM-X1 クロスボーン・ガンダムX1パッチワーク(アンカーシールド)
UNIT
U-C115 赤 2-6-2 R
クロスボーン系 MS 専用「トビア・アロナクス」
戦闘配備 《[2・4]》換装〔クロスボーン・ガンダム
【マルチプル>(配備フェイズ):《(0)》自軍ジャンクヤードにあるカード1枚を、持ち主の手札に移す。または自軍本国のカード全てを見て、その中にあるユニット3枚までを廃棄し、自軍本国をシャッフルする】
(自動A):このカードの「マルチプル」では、「名称:クロスボーン」であるユニットを、このカードと同じ名称のユニットとして扱う事ができる。
宇宙 地球 [5][1][5]

 地球にやってくる際に使用したノッセルを降り、スピードキングを発見した後、来るカリスト戦に備えてデブリ回収用のアンカーをナックルガードとして装備したクロスボーン・ガンダムX1パッチワーク。毎度の事ながら戦闘力は特に他の装備と変わりはなく、特殊効果に関しても換装くらい……といってもいいのだが、なぜか戦闘配備を持っている。まあ他に特殊効果があるでもなく、戦闘力も旧6国帯と同サイズなので、最近のカード効果の計算式にのっとった結果こうなったのだろう。まあこんな言い方をしてはいるが、前のX1&X2が持っていた戦闘配備に比べれば、あちらが7国でこちらは6国というクロスボーン・ガンダムを素プレイするための最低国力帯であることにくわえ、このカードの効果は、後述するが配備フェイズ中ならば出して即使える効果であるため、実際にこの効果でリロールインする機会はかなり多いだろう。ただ、その効果が基本的に戦闘エリアに出てどうする、という効果のため、結局のところそこまで戦闘配備の利点はない。まあ、もちろんないよりはあったほうがいいに決まっているのだが。ソレスタルビーイング※1なんかはもう飛んでこないだろうし。
 さて、肝心の効果の考察だが、このカードはX1&X2に引き続き、かつてのクロスボーン・ガンダム達の持っていた、クロスボーン・ガンダムをコストにするマルチプル効果を備えている。……だが、何故かX1&X2と同じように「『名称:クロスボーン』であるユニットを〜〜」といった記述なので、別にクロスボーン・ガンダムではなくても「××(クロスボーン・バンガード仕様)」などといったユニットであればコストにすることができる。まあそれこそまさにこのカードからガンダムDXに換装※2するようなことではあるが。
 そしてマルチプル自体の効果について。その能力は、「自軍ジャンクヤードにあるカード1枚を手札に加える」といういたってシンプルなものと、「自軍本国の中から3枚までのユニットを廃棄する」という前者に比べると若干ややこしい効果の2つから1つを選んで解決できるというもの。ここで初めに言っておくと、片方はシンプル、片方はややこしいとは評したが、両方とも恐ろしく強力な効果である。まず、カードを回収する効果は、単純に相手の妨害によってジャンクヤード送りになったカードを回収するために利用することができるが、遊戯王で魔法カードを回収するカードがことごとく規制・禁止化の波をかぶったことからみてもわかるように、ガンダムウォーにおいてその「魔法カード」に当たるコマンドを回収できるのはとてもとても強い。密約などのドローソースを使いまわすだけでもはや挽回不可能なほどのアドバンテージをとれるし、相手を直接破壊、除去するようなカードを使い回せば使った分だけ場は固まっていく。私見だが、デッキを選ぶとはいえこのカードは現在GWの中でもっとも簡単にコマンドを使いまわすことのできるカードだろうと思う。正直、バルチャーでコマンドを回収するには総計8国力ものユニットが破壊されなければならない……というのはともかく、ダメージ判定ステップ開始時限定、回収できるのは3国力以下でコマンド限定であり、それ以外に効果もない上、弾までX1で縛る(といっても、現在のクロボンデッキにはX3、X2は入らない事が多いが)改・改はそれこそエスコート※3を使いまわすこと以外には一切採用理由のないカードになった、といってしまっていいだろう。それに加えて、改・改はパッチワークから換装できない※4というのも痛すぎる。まあ古いカードはいずれこうなるもので、むしろ遅かったくらいなのかもしれないが……
 そして2つ目の効果だが、実はこちらの効果こそがこのカードの一番ヤバいところである。効果を読んだだけでは、本国から3枚抜き出し(3ダメージを受ける)、それをジャンクヤードという場に干渉しないところに送っているだけというそれ自体がアドバンテージとはなりえない効果なのだが、この効果は前者のテキストの方とシナジーしており、落としたユニットを拾うことが可能……という生ぬるい事で終わるテキストでは当然ない。ようするに、この効果でデッキの中のクロスボーン・ガンダムを落とし続ける事で、このデッキのマルチプルの弾を本国から尽きない限り補充できるのである。しかも1度に3枚。これはつまり、この効果を使って落としたあと、自軍、敵軍ターンに1回ずつマルチプルを使ったとしてもまだ1枚残っているわけであり、さらにそこから弾を補充できる枚数である。まさに無尽蔵といっていい。つまり、基本的にこのカードが出てきた時点で、「カードが出たはいいが、マルチプルの弾が足りない」というクロスボーン・ガンダムデッキによくある弱点は克服されるのである。……これによって、今までの「多少の事故性を覚悟してでも、マルチプルを活かすために赤茶混色にする」といった選択肢はその選択意義の多くを潰されることになったといっていいだろう。もっとも、基本赤単でこのカードを回そうとすると、実質回収できるカードは1度手札に引き込んだカードだけになるので、そうではないカードもジャンクに落とせる赤茶と相性が悪い、というわけでは決してないのだが……とはいっても、一応自軍本国を自ら削る上に、回復カードを使用したとしてもこの損失は回復できないこと、あんまり無計画に落としてしまうとイザという時に欲しいクロスボーン・ガンダムがすでに全て取り除かれている、ということにはなりかねないので、一応このあたり注意して効果を使用していく必要はある。
 ではなぜ、このカードの登場によって赤単の形がほぼクロボンデッキの全てをしめるようになったのか?答えは簡単である。あんまりにも自己完結しすぎている上に、その効力がハンパではないのだ。
 先述したが、コマンドを使いまわすというのはあんまりにも強力な効果である。しかもこれは詳しくは後述するが、タイミングは配備フェイズであり、自軍ターンなら回収したカードはまず、すぐに使うこともできる。その強力さは、ドロソにしろカウンターにしろその他妨害にしろ、デッキにしかとした理由を持って投入されている物ならば他のクロスボーン・ガンダムのマルチプル効果を大きく超えるものである場合は多い。そして、このカードはその効果を使用するための弾丸を自身で補充する事ができる。つまり、このカードが場に残っている限り、このシステムエンジンはとまらず、デッキをこのカード1枚で高速に回転させることができる。なので、わざわざデッキの中のGを増やして使用したいカードもマルチプルのタネも減ってしまう上に、事故率も上がる赤茶にするメリットは総合的に薄いと俺は考えている。ぶっちゃけ、俺は最速4ターン目にこれを出し、マルチプル使用で3枚落とし、次の敵のターンに密約回収、さらに次のターンで回収した密約使用、まで邪魔が入らなかったら内心勝ったと思っている。ただ、赤単ではこのカードを出した所で回収できるカードがなくては、ただジャンクをこやすだけのカードになってしまうので、ドロソが引けていない場合はクロボンの手札消費が激しい事もあってかなり展開が厳しくなる。そう言った意味では、ドロソコマンドの数が単純に増える赤茶の意味は若干あるかもしれない。ちなみに、このカードを赤単で積む場合は、クロボンにとって強力なドローカードになる、たった6日のクエスト※5の採用枚数は考えた方がいい。というのも、このカードを引き込む事、またこのカードの換装元になるパッチワークを引き込む事にも6クエは必要なカードではあるが、このカードでクロスボーン・ガンダムをジャンクヤードに落としてしまうと、当然ながらデッキに残っている該当カードの数が減り、6クエの成功率は低くなってしまうのである。つまり出る前は手札に来て欲しいが、出た後はあまり手札に来て欲しくないカードなのである。まあ大体は2枚に落ち着くだろうか。
 なお、、このカードはガンダムウォー初のタイミングが(配備フェイズ)のマルチプルを持つカードである。本来マルチプルは戦闘フェイズ中ならばコストさえ支払えば何度でも使用可能、という効果なのだが、このカードは(配備フェイズ)の指定がある上に、(0)の表記まであるので、テキストの優位性に従って、この効果を使用できるのは配備フェイズ、さらに1ターンに1度まで、となる。ここまでくるともはやマルチプルとは別の効果なのではとすら感じられるが、書いてあることなのでしょうがない。ちなみに今までのようにタイミングをテキスト内で指定しているのではなく、別個に示されている上、効果のテキスト自体にはカードの存在する場所、タイミングの指定がないため、フルクロスの効果でジャンクのこのカードを取り除いた場合、このカードのマルチプル効果を使用することができる。基本的には素直にアンカーシールドでマルチプルしておけばいいのだが、赤茶でアンカーシールドを引かない状態でフルクロスを出した時や、回収するカードを戦闘フェイズのギリギリまで待ってから考えたいときなんかは役に立つ事もあるテクニックだろう。しかし、アンカーシールドはフルクロスも装備しており、それを使って迫力ある逆転シーンを演出した事もあるので、パッチワークのアンカーシールドがこれならフルクロスのアンカーシールド装備がカード化されたらもっとすごい……ということは多分ないだろう。
 ちなみに、弱点はもちろんジャンク除外。両方がジャンク利用を前提とした効果なので、それを封じられると何もする事ができないし、調子に乗って5枚も6枚も廃棄したところをまとめて除外されたりすると本国の枚数的にもとても厳しいことになる。だが、ぶっちゃけクロボンがジャンク除外に弱いのは前からそうであり、このカードの効果が余りにも飛びぬけているため、別にこのカードだからの弱点、とは言わないかもしれない。
 ついでに今までのクロスボーン・ガンダムデッキとはずいぶんコンセプトが変わっている上にとても強力な薄情マリーダ・クロスボーンデッキについても解説しようかと思ったが、疲れたしまだコア・ファイター(X3)を解説してないのでここまでということで。


※1「ソレスタルビーイング」……自分のダメージ判定ステップ中に、リロール状態で場にあるG以外の相手カード1枚を破壊するという効果を持つコマンド。もう一つの効果によりカウンターを初め対抗策の多くが通じない厄介な効果で、戦闘配備はリロール状態ででることが強制されてしまうのでこれの的になってしまうのだが、このカードはダブルオー国力が指定されているので、コスト支払いのルール改定によって実質使っている場面はほとんどみられなくなった。
※2「このカードからガンダムDXに換装」……名称「クロスボーン・ガンダム」は現存する全てのカードが「クロスボーン・ガンダムX」までの名称を同じくする。よって、名称「ガンダムX」を換装元とするガンダムDXは、アンカーシールドに限らず全てのクロスボーン・ガンダムから換装可能なのである。まるで言葉遊びだが、実際言葉遊び程度の実用性であり、これを活かすのは相当に難しい。
※3「エスコート」……アンカーシールドのマルチプルによってではこのカードは回収できない……というわけでは当然ないのだが、このカードはハンガーからプレイされると敵軍ユニットを本国の上に返すという強力な効果を持つコマンドなのである。そして改・改はこれを直接ハンガーにおくれるのだが、アンカーシールドで回収した場合は手札にきてしまうので、この効果を最大限活かすのは難しいだろう。
※4「改・改はパッチワークから換装できない」……改・改も一応換装はもっている。もっているが、換装元に出来るのは名称「クロスボーン・ガンダムX1改」であるユニットだけであり、現状、残念ながらその名称を満たすカードでクロボンデッキに入る強力カードはない、といっていい。しかも換装できたとしても必要国力までもが1国重い。そうなると、むしろこの換装は換装を持つガンダムを場からはがしてしまう効果を持つ火星ガンダムの対象になる、というデメリットだけが目だってしまう分、ない方がましとすら言える。……もう、改・改には本当にエスコートしか残っていない。
※5「たった6日のクエスト」……解説する必要はぶっちゃけないだろうが、一応。本国の上6枚を見て、その中に名称「クロスボーン・ガンダム」なユニットかキャラクターがあるだけ手札に加える事ができるカード。デッキの構築を考えるだけでかなりの確率で2枚以上のカードを引き込みアド得になってくれるクロボン垂涎のカードだが、抜き出したカードが1枚以下の場合はターン終了時に無作為ハンデスが起こってしまうので、引き込むのに該当するクロボンをさんざん廃棄した後でこれが手札に来てしまうと、使用するのにこわいものはある。