チェンジで。

 引き続きGWエラッタ、ルール変更紹介。前回で特殊効果の変更については全て触れたはずなので、今回からカードのエラッタに……行こうかと思ったが、その前にルール変更についてまだ知っていることがあるので、そっちからさきに。

・「その場合」


 GWにはいわゆる「その場合構文」というテキストが存在する。例としては
(常時):(0)手札1枚を選んで廃棄する。その場合、ユニット1枚に2ダメージを与える。
 というような、テキストの前半と後半が「その場合」で区切られているテキストのことだといえる。ようするに、何らかの効果が与えられる代わりに、何らかのコストや状態を要求している場合が多い。この構文によるテキスト自体はGWに昔からある書き方だが、昔のルールではそのテキストを使用した場合、「その場合」で区切られているテキストは、その後半が解決できない状態であっても、可能な限り解決することができ、また解決する必要があった。どういうことかというと、例えば先ほど例に出したテキストを宣言し、ダメージを与える敵軍ユニットを指定した時に、カットインでそのユニットが手札などに移動した場合、対象の不在によりテキスト後半の「ダメージを与える」効果は適応できないが、前半の「手札1枚を廃棄する」の部分は適応しなければならないということである。つまり、コストを必要とするテキストは、その効果使用の際に効果が適応できない場合、コストだけをしょいこまなければならないということであり、こうした現象はカードゲームにおいて(とりあえず遊戯王においては)ポピュラーな処理現象だといえるだろう。
 だが、一体いつだったか正確な日にちは覚えていないが、ある時、この「その場合」構文自体に関するルール変更が起こった。すなわち、「後半の効果が解決できない場合、前半の効果も解決する事ができない」という仕様に変更されたのである。これにより、また前述の例の場合、「ダメージを与える事ができなくなったが、手札を廃棄することもない」ということになったのである。これにより、フリーダムガンダムミーティア)などのテキスト仕様に、テキストで指定されているコストを必要とするカードは、(1毎)のカット中回避能力を持っているパッチワークを打ち抜くことが可能になったり、そんな個人的なケースでなくても、そうしたテキストが不発によるコストの無駄払いを恐れる事がなくなっただけでも、そうしたカードには有利に働いた。
 さて、一体なぜこのような仕様になったのか?確かにこの裁定によってテキスト間のパワーバランスには多少変動はあったのかもしれないが、正直そこまで気にするほどではない。すなわち、この点においてわざわざ幾多の誤解を招き、信用を失う恐れのある「ルール変更」という手段をとるのは合理的ではないといえるだろう。……その答えはたった一つ。Sガンダム……というか「Gコア」のせいである。
 どういうことかというと、Gコアはクイック(出たのは変更前)持ちのユニットで、こういうテキストがある。
(戦闘フェイズ):《[2・3](1)》自軍「Gアタッカー」「Gコア」「Gボマー」の内、任意の3枚を自軍ハンガーに移す。その場合、手札、自軍ハンガー、自軍ジャンクヤードにある「Sガンダム」1枚を、自軍配備エリアにリロール状態で出す。
 当時のSガンダムデッキは、このGコアの効果を主軸にデッキを組み、回復はミリタリーバランスという、自軍ユニットがプレイで出るごとに本国を回復できるオペレーションで行う、というのが主流だった。まず、これらのことを前提として知ってもらった上で、本格的な解説に入りたい。
 当時のルールでは、「その場合」後半の効果が満たせない場合でも、前半部分のコストを支払わなければならないというルールだったことは先に述べたが、その現象をこの「Gコア」にあてはめると、「Sガンダムを出す」という効果が不発の場合、指定の3枚がハンガーに移る、という効果だけが適応される。つまり、効果発動に「Gコア」を含めてハンガーに移せば、それをまたプレイすることでミリタリーバランスで回復でき、結果本国が無尽蔵も同然となるということができるのだ。だが、このループには一見抜け道がある。それは、「対象となるべき場に出すSガンダムがいない」場合、そもそも対象を取ることができないので、テキストのプレイすらできないということである。実際、また最初の例で言うなら、敵軍ユニットがいないときに効果を使い、手札だけ捨てるという事はできない。だがだが、それに対する抜け道が存在した。それは「手札の秘匿性」である。
 当たり前だが、通常、自分の手札は常に相手にとって何が存在するのかわからない場所である。このことにより、例え実際にはなかったとしても、「自分の手札には〜〜があります」ということを(口で言うのは挑発に入るが)感じさせるプレイングが認められている。つまり、「手札から〜〜を出す」というテキストを実際に対象が存在しないのに使ったとしても、それは空撃ちではなく、不発として処理されるのみなのだ。ここまで書けばもう全ておわかりいただけただろうと思うが、「手札にSガンダムがいないのにGコア効果を使い、手札のSガンダムを出すといいつつ効果は不発になり、ユニットをハンガーに送る効果のみを使う」というプレイングは適性となるのである。したがって、場に「Gコア」が3枚(そろえるのはそんなに苦ではない)、あとミリタリーバランスがあれば、そのまま永久回復ループの完成となるのだ。
 これは当時もともと強かった「Sガンダムデッキ」において、これが成立したとき、その強さをどうしようもなくしてしまうコンボとして有名であり、実際これが完成したSガンダムデッキを崩す方法はほぼ存在しなったといっていい。……というのもあるが、正直どう見てもないとわかりきっているのにテキストがプレイできる、と言う事自体が見た目バグっていたというのが個人的に一番問題だったんだと思う。というわけで、「その場合」構文のテキストは現在のルールになり、「テキスト自体はプレイできるが、結果Sガンダムが出てこれない場合、ハンガーに移る効果も使えない」という仕様になったおかげで、その無限ループはついえたのである。
 なお、このおかげで、今までは特に「その場合」と違いはないものと思われていた「〜〜する。その後、」やそもそも明らかに2段階に分かれていながら明確な語句で区切られていないものとの違いがあると思われるのだが、正直よくわからなくなっている。例えば、「戦闘エリアに飛び出し」「相手ユニットを戻す」という効果を持つコレンカプルのテキストは、その間のテキストが何か語句でつながれているわけではないので、最初から相手ユニットが移動できない場合はそもそも対象に取れないのでともかく、カットインで移動しない状態になったりした場合、コレンカプルは戦闘エリアに飛ぶのか飛ばないのかなどは明確な判断基準があるとは言いづらいのではないだろうか。